Topic:数と式/式

式の展開と因数分解

指数法則

累乗 $a^2$, $a^3$ を掛け合わせた積 $a^2\times a^3$ を考えると、

$\begin{array}{cc}{a}^2\times a^3& =(a\times a)\times (a\times a\times a)\\ & =a\times a\times a\times a\times a\\ & =a^5\\ & =a^{2+3}\end{array}$

なので、一般に累乗の積 $a^m\times a^n$ は指数の和 $a^{m+n}$ になると予想できます。

定理（指数法則）

任意の自然数 m, n について、

• $a^m{a}^n=a^{m+n}$…①
• $(a^m{)}^n=a^{mn}$…②
• $(ab{)}^n=a^n{b}^n$…③

が成り立つ。

証明（指数法則①）

累乗の定義

$a^n=\underset{n}{\underbrace{a\times a\times \cdots \times a}}$

より、

$a^m\times a^n=\underset{m}{\underbrace{a\times a\times \cdots \times a}}\times \underset{n}{\underbrace{a\times a\times \cdots \times a}}$

掛け合わされている a の個数を数えると、全部で m + n 個になるので、

$\begin{array}{cc}{a}^m\times a^n& =\underset{m}{\underbrace{a\times a\times \cdots \times a}}\times \underset{n}{\underbrace{a\times a\times \cdots \times a}}\\ & =\stackrel{m+n}{\overbrace{\underset{m}{\underbrace{a\times a\times \cdots \times a}}\times \underset{n}{\underbrace{a\times a\times \cdots \times a}}}}\\ & =\underset{m+n}{\underbrace{a\times a\times \cdots \times a}}\\ & =a^{m+n}\end{array}$

したがって、任意の自然数 m, n について、

$a^m\times a^n=a^{m+n}$

が成り立つ。∎

証明（指数法則②）

$(a^m{)}^n=\underset{n}{\underbrace{a^m\times a^m\times \cdots \times a^m}}$

指数法則 $a^m\times a^n=a^{m+n}$ より、$a^m\times a^m=a^{m+m}$ であるから、

$\begin{array}{cc}(a^m{)}^n& =\underset{n}{\underbrace{a^m\times a^m\times \cdots \times a^m}}\\ & =a^{\stackrel{n}{\overbrace{m+m+\cdots +m}}}\end{array}$

乗法の定義

$\underset{n}{\underbrace{a+a+\cdots +a}}=a\times n$

より、

$\begin{array}{cc}(a^m{)}^n& =a^{\stackrel{n}{\overbrace{m+m+\cdots +m}}}\\ & =a^{m\times n}\end{array}$

したがって、任意の自然数 m, n について、

$(a^m{)}^n=a^{m\times n}$

が成り立つ。∎

証明（指数法則③）

$\begin{array}{cc}(ab{)}^n& =\underset{n}{\underbrace{ab\times ab\times \cdots \times ab\times ab}}\\ & =\underset{n}{\underbrace{a\times b\times a\times b\times \cdots \times a\times b\times a\times b}}\end{array}$

交換法則 $a\times b=b\times a$ により掛ける順番を入れ替えると、

$\begin{array}{cc}(ab{)}^n& =\underset{n}{\underbrace{a\times b\times a\times b\times \cdots \times a\times b\times a\times b}}\\ & =\underset{n}{\underbrace{a\times a\times a\times a\times \cdots \times b\times b\times b\times b}}\end{array}$

$(ab{)}^n$ より、ab は n 個掛け合わされており、a, b はそれぞれ n 個掛け合わされているから、

$\begin{array}{cc}(ab{)}^n& =\underset{n}{\underbrace{a\times a\times a\times a\times \cdots \times b\times b\times b\times b}}\\ & =\underset{n}{\underbrace{a\times a\times \cdots \times a}}\times \underset{n}{\underbrace{b\times b\times \cdots \times b}}\\ & =a^n{b}^n\end{array}$

したがって、任意の自然数 m, n について、

$(ab{)}^n=a^n{b}^n$

が成り立つ。∎

注意

指数法則は累乗の定義より明らかなので、累乗の定義を用いた指数法則の証明は直感的ですが、この証明は「…」の部分が何を指しているのかが曖昧なため、数学的には必ずしも正しいとはみなされません。数学Bの数列の項で学習する数学的帰納法（すうがくてききのうほう、mathematical induction）と呼ばれる証明法を用いると、より厳密な証明を行うことができます。

定義（累乗）

自然数 n に対して、漸化式

$a^1=a$,

$a^{n+1}=a^n\times a(n\ge 1)$

により累乗を定義する（ただし n は 1 以上の整数）。

証明（指数法則①）

数学的帰納法による。

$a^m{a}^n=a^{m+n}$

$n=1$ のとき、累乗の定義より、

$\begin{array}{cc}{a}^m{a}^1& =a^{m}a\\ & =a^{m+1}\end{array}$

は明らかに真である。

$n=k$ のとき、

$a^m{a}^k=a^{m+k}$

が真であると仮定すると、$n=k+1$ のとき、$a^{m+1}=a^{m}a$ より、

$\begin{array}{cc}{a}^m{a}^{k+1}& =a^m{a}^{k}a\\ & =a^{m+k}a\\ & =a^{m+k+1}\end{array}$

は真である。したがって、任意の自然数 m, n について、

$a^m{a}^n=a^{m+n}$

は真である。∎

証明（指数法則②）

$(a^m{)}^n=a^{mn}$

$n=1$ のとき、

$\begin{array}{cc}(a^m{)}^1& =a^{m\times 1}\\ & =a^m\end{array}$

は明らかに真である。

$n=k$ のとき、

$(a^m{)}^k=a^{mk}$

が真であると仮定すると、$n=k+1$ のとき、$a^{m+1}=a^{m}a$ より、

$\begin{array}{cc}(a^m{)}^{k+1}& =(a^m{)}^k(a^m{)}^1\\ & =a^{mk}{a}^m\end{array}$

指数法則 $a^m{a}^n=a^{m+n}$ より、

$\begin{array}{cc}(a^m{)}^{k+1}& =a^{mk}{a}^m\\ & =a^{mk+m}\\ & =a^{m(k+1)}\end{array}$

は真である。したがって、任意の自然数 m, n について、

$(a^m{)}^n=a^{mn}$

は真である。∎

証明（指数法則③）

$(ab{)}^n=a^n{b}^n$

$n=1$ のとき、

$\begin{array}{cc}(ab{)}^1& =a^1{b}^1\\ & =ab\end{array}$

は明らかに真である。

$n=k$ のとき、

$(ab{)}^k=a^k{b}^k$

が真であると仮定すると、$n=k+1$ のとき、$a^{m+1}=a^{m}a$ より、

$\begin{array}{cc}(ab{)}^{k+1}& =(ab{)}^k(ab{)}^1\\ & =a^k{b}^k{a}^1{b}^1\\ & =a^k{a}^1{b}^k{b}^1\\ & =a^{k+1}{b}^{k+1}\end{array}$

は真である。したがって、任意の自然数 m, n について、

$(ab{)}^n=a^n{b}^n$

は真である。∎

一次不等式

一次不等式とは、式の次数が一次である不等式のことである。 一次不等式の解き方は一次方程式と極めて似ているが、一次方程式と違うところは両辺を負の数で割ると不等号の向きが変わる事である。

$-10+2x\ge -5+7x$

$-5x\ge 5$

$x\le -1$