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* 上位ページ:[[Topic:固体物理学]] 金属という言葉は定義が難しい。一般的な中学理科の教科書によれば、金属とは、「電気を通す物質」「展性や延性に優れた物質」「特徴的な光沢(金属光沢)のある物質」だという。 しかしこれは金属の一般的な特徴を百科事典的に述べたものであり、これを金属の定義だとするにはやや曖昧であると言えよう。 物理学的にはどう定義づけるか。これも学者間で諸説あるためここで明言できるものではないが、少なくとも固体物理専門の人間の多くは、「バンド理論において、フェルミ準位がエネルギーバンドを横切る物質」と表現するだろう。バンド理論については[[エネルギーバンド|こちら]]を参照していただきたいが、要するにこの理由で自由電子が存在する物質が金属ということである。 本講座は自由電子に焦点を当て、その振る舞いを記述することで、金属の物性を説明してみるという試みである。 ==1個の自由電子系== 本節では自由電子が一つだけ存在するような空間を考える。いやしかし金属の物性を考察する上で一見すればあまりに空想的な物理モデルであるこの1個(ないしは後述の<math>N</math>個)の自由電子系を考える必要があるのか。この問い自体の回答は本講座にはない。[[ほとんど自由な電子近似]]の講座を併せて考えてもらいたい。 さて自由電子とは、外場からのポテンシャルを受けずにその名の通り自由に振る舞う電子のことである。一体電子のハミルトニアンは一般に <math> \mathcal{H}=\frac{\mathbf{p}^2}{2m}+V(\mathbf{r}) </math> と表されるが、自由電子の場合にはポテンシャルがないため<math>V(\mathbf{r})=0</math>である。ただし<math>m</math>は電子の質量、<math>\mathbf{r}, \mathbf{p}</math>はそれぞれ電子の位置および運動量のベクトルである。 電子の波動関数<math>\Phi(\mathbf{r},t)</math>はシュレーディンガー方程式 <math> i\hbar\frac{\partial\Phi(\mathbf{r},t)}{\partial t}=\mathcal{H}\Phi(\mathbf{r},t) </math> によって記述される。この解は、ハミルトニアンの固有値方程式 <math> \mathcal{H}\phi(\mathbf{r})=-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2\phi(\mathbf{r})=\varepsilon_\mathbf{k}\phi(\mathbf{r}) </math> を解くことで <math>\phi(\mathbf{r})=A\exp(i\mathbf{k}\cdot\mathbf{r})</math> <math>\varepsilon_\mathbf{k}=\frac{\hbar^2\mathbf{k}^2}{2m}</math> となる。<math>\phi(\mathbf{r})</math>は平面波の様子であり、<math>\varepsilon_\mathbf{k}</math>はこの系の'''基底状態'''(温度<math>T=0</math>)のエネルギーである。ただし、<math>A</math>は規格化のための定数、<math>\mathbf{k}</math>は平面波の波数ベクトルである。 ここで注意すべきは、この平面波のモデルは空間が無限であることを想定しているという点である。すなわちここまでの議論において<math>\mathbf{r}</math>の境界条件が設定されていない。これでは固体物理を扱っていることにならない。 そこで、ここでは'''周期境界条件'''を導入し、系の大きさに制限を持たせる。その上で系の境界ではなく内部について考察しよう。 周期境界条件とは、系の「始端」と「終端」(この2つは便宜上用いるもので一般的な物理用語ではない)での状態、すなわち波動関数の値が等しいと仮定する境界条件である。例えば、<math>xyz</math>座標系において長さ<math>L</math>の立方体の物理系を考えるとき、系内部に存在する波動関数<math>\Phi(x,y,z)</math>の値について <math>\Phi(0,y,z)=\Phi(L,y,z)</math> <math>\Phi(x,0,z)=\Phi(x,L,z)</math> <math>\Phi(x,y,0)=\Phi(x,y,L)</math> が成り立つような条件である。この周期境界条件は系の大きさ<math>L</math>が十分大きければ現実の物理をよく記述できることが知られている。 [[ファイル:Lattice points.jpg|thumb|right|波数空間上に等間隔で並んだ格子点群。視認性のために<math>Z</math>軸方向から見た2次元平面のみを描いている。]] 上の例の仮定を自由電子系に適用してみる。先ほどの固有値方程式の解<math>\phi</math>は規格化条件 <math>\int_0^Ldx\int_0^Ldy\int_0^Ldz|\phi(\mathbf{r})|^2=1</math> を満たさねばならないことから、規格化定数<math>A=\frac{1}{L^{3/2}}</math>と計算できる。 また、この波動関数が周期境界条件を満たすためには <math>\exp(ik_xL)=\exp(ik_yL)=\exp(ik_zL)=1</math> である必要があり、これを満足する<math>\mathbf{k}=(k_x,k_y,k_z)</math>は <math>k_i=\frac{2\pi}{L}n_i \ \ \ \ \ \ (n_i\in\mathbb{Z};i=x,y,z)</math> に限られる。これは波数空間上では<math>\frac{2\pi}{L}</math>で等方的に等間隔に並んだ格子点で表現される。 ==N個の自由電子系== 複数の電子を考える際には'''パウリの排他原理'''を考慮せねばならない。この原理は「2個の電子が同じ量子軌道を占有することを許さない」というものである。電子のようにこの原理に従う粒子を'''フェルミ粒子'''と呼ぶことがある。 具体的には、系が基底状態であれば、各状態にはエネルギーの低いほうから順にアップスピンとダウンスピンの電子が一つずつ詰められ、同じ向きのスピンが同じ状態を占有することはない。 以下、<math>N</math>個の自由電子系の基底状態を考える。 この系の基底状態のエネルギー<math>E_0</math>を求めるには<math>N</math>個分の<math>\varepsilon_\mathbf{k}</math>を合計してやればよい: <math>E_0=2 \sum_{n_x, n_y, n_z}^{k<k_F}\varepsilon_\mathbf{k}</math> 因子<math>2</math>は、上下のスピンがそれぞれ同数あることによる。<math>k=k_F</math>は'''フェルミ波数'''といい、この波数に対応するエネルギーを'''フェルミエネルギー'''という。フェルミエネルギーは<math>\varepsilon_F=\frac{\hbar^2}{2m}k_F^2</math>で表される。 フェルミ波数とは、系が基底状態にあるためにすべての電子が波数空間上で最低に落ち込む際、それらの中でも最大となる波数のことである。同様にフェルミエネルギーとは、基底状態でエネルギーの低い順に電子が詰め込まれた際の最大のエネルギーのことである。 <math>\sum^{k<k_F}</math>は、波数空間において原点からの距離<math>k=\sqrt{k_x^2+k_y^2+k_z^2}</math>が<math>k_F</math>までの領域の格子点の合計であるので、これを計算するためには、フェルミ波数<math>k_F</math>を求める必要がある。それは、電子の総数と波数空間上で電子が占有する格子点の数が一致するという条件から <math>N=2\sum_{n_x, n_y, n_z}^{k<k_F}1</math> と立式することで求められる。ここで、<math>L</math>が十分に大きく、格子点同士が密である場合(すなわち<math>2\pi/L<<1</math>)を考えることで、和を積分に置き換える: <math>\sum_{n_x, n_y, n_z}^{k<k_F} \rightarrow \int dn_x\int dn_y\int dn_z =\frac{2\pi}{L}\int dk_x\frac{2\pi}{L}\int dk_y\frac{2\pi}{L}\int dk_z</math> これによって式を書き直すと <math>N=2\left(\frac{2\pi}{L}\right)^3\int dk_x\int dk_y\int dk_z\theta(k_F-k_i)</math> となる。ここで<math>\theta(x)</math>は階段関数(<math>x>0</math>のとき<math>1</math>、<math>x<0</math>のとき<math>0</math>となる関数)である。つまり、半径<math>k_F</math>の波数空間上の球の体積が電子の総数<math>N</math>に等しいということである。 球の体積を求めるためには、極座標系に変換すれば簡単である。 <math>N=2\left(\frac{2\pi}{L}\right)^3 4\pi\int_0^{k_F} k^2 dk=\frac{L^3 k_F^3}{3\pi^2}</math> この導出過程は各自で計算してみよ。<math>k_x, k_y, k_z, k</math>はそれぞれ"一般的な"極座標系の変換における<math>x, y, z, r</math>に相当すると考えればよい。ここから、フェルミ波数は <math>k_F=\left(\frac{3\pi^2N}{L^3}\right)^{1/3}</math> と求めることができた。フェルミ波数は電子の密度<math>L^3/N</math>だけで決まるというのは、波数空間上での格子点の密度で球の半径が変わることからもイメージできるだろう。 これと同様に、<math>E</math>についても、和を積分に変換して計算すれば <math>E_0=2\left(\frac{2\pi}{L}\right)^3 4\pi\int_0^{k_F} k^2 dk\frac{\hbar^2 k^2}{2m}=\frac{L^3}{\pi^2}\frac{\hbar^2}{2m}\frac{k_F^5}{5}</math> 1電子あたりの基底エネルギーは <math>\frac{E_0}{N}=\frac{3}{5}\varepsilon_F</math> である。 さきほども述べたように、<math>T=0</math>(基底状態)の自由電子系では電子が<math>\varepsilon_F</math>以下のすべてを占めている。これは波数空間上では半径<math>k_F</math>の球表面を境界とし、その内部の格子点が占められていることを意味する。この球表面を'''フェルミ面'''という。フェルミ面が存在することは、電子がフェルミ粒子であることを反映している。ちなみに、一般に金属(の伝導電子)のもつフェルミ面は理想的な球面ではない。 ==有限温度での状態== これまでは、絶対零度<math>T=0</math>についての自由電子系について述べてきた。これは、[[Topic:統計力学]]で説明する'''フェルミ分布関数''' <math>f(\varepsilon)=\frac{1}{\exp{\beta(\varepsilon-\mu)}+1}</math> が<math>1 </math>(すなわち<math>\varepsilon=\mu</math>)の場合に相当している。 [[ファイル:Fermi function.jpg|フェルミ分布関数。極低温域(<math>E_k>>k_BT</math>)では図中青色のように<math>E_k=\mu</math>のときに分布が急落する。|thumb]] しかしながら現実世界の金属を記述する固体物理学では当然<math>T>0</math>を考えるべきであり、その場合にはエネルギー<math>E</math>と電子数<math>N</math>を求める式は <math>E=2\sum_{n_x, n_y, n_z}\varepsilon_\mathbf{k}f(\varepsilon_\mathbf{k})=2\left(\frac{L}{2\pi}\right)^3\int dk_xdk_ydk_z\varepsilon_\mathbf{k}f(\varepsilon_\mathbf{k})</math> <math>N=2\sum_{n_x, n_y, n_z}f(\varepsilon_\mathbf{k})=2\left(\frac{L}{2\pi}\right)^3\int dk_xdk_ydk_zf(\varepsilon_\mathbf{k})</math> となる。ここで、電子の'''状態密度'''(これも詳しくは[[Topic:統計力学]]で扱う) <math>D(\varepsilon)=\left(\frac{L}{2\pi}\right)^3\int dk_xdk_ydk_z \delta(\varepsilon-\varepsilon_\mathbf{k})</math> を用いることで <math>E=2\int d\varepsilon D(\varepsilon)\varepsilon f(\varepsilon)</math> <math>N=2\int d\varepsilon D(\varepsilon)f(\varepsilon)</math> と表される<ref group="注"><math>D(\varepsilon)d\varepsilon=\left(\frac{L}{2\pi}\right)^3\ dk_xdk_ydk_z \delta(\varepsilon-\varepsilon_\mathbf{k})</math>と考えよ。</ref>。この2式から<math>E=N\varepsilon</math>となり、前項の最初で述べた「基底状態のエネルギー<math>E_0</math>を求めるには<math>N</math>個分の<math>\varepsilon_\mathbf{k}</math>を合計してやればよい」という説明の妥当性が理解できるだろう。 '''この<math>E</math>および<math>N</math>の表式は自由電子に限らず一般に成り立つ関係である。''' これ以降、系が十分低温(<math>k_BT<<\varepsilon_F</math>)のときを考える。ちなみに<math>k_B</math>は'''ボルツマン定数'''であり、<math>k_BT</math>は分子が持つエネルギーの大きさである。いわば、自然界のエネルギーの単位と考えてよいだろう<ref group="注">感覚的な記述である。</ref>。 %執筆途中です(Yamaextra) ==注釈== <references group="注" /> [[カテゴリ:固体物理学|しゆうてんしかす]]
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